2021年7月18日日曜日

ゼロドリフトオペアンプADA4522で電圧を増幅して測定してみた


背景

以前オペアンプOP07で電圧の増幅を行いました。
その記事のコメントでチョッパ回路などオフセットをキャンセルする回路を利用すれば精度が高くなるのではないかと情報をいただきました。

秋月電子にADA4522というオフセットをキャンセルする回路を内蔵したオペアンプが売られていたので試してみました。

ゼロドリフトオペアンプとは?

詳しい内容は下記analog device社の解説ページなどを参照してください。

アプリケーション・ エンジニアに尋ねる―39 ゼロドリフト・オペアンプ

消費電力は上がるものの、オフセット電圧を動作中に自動で変更して精度を高めるオペアンプと自分は認識しています。
記事のコメントで共有して頂いたチョッパ回路も内蔵しているようです。

使ったもの


測定回路

下記サイトで紹介された回路を参考にしています。

オペアンプで始めるアナログ回路

OP70の時に試した回路とほぼ同じです。
精度の高さを見たいのでR3には10kを利用します。


オペアンプAD4522は、変換器版に実装後、ピンの名前が分かるようにビニールテープで役割を書きました。



組み上げるとこうなりました。



Analog Discovery2のずれ電圧を把握

手持ちのAnalog Discoveryは1+と1-を接続しても測定値が0vにならず、およそ-1.9±0.9mVになりました。
この値は時間をおいて実験すると変わるので、実験前に把握し直すのをおすすめします。
具体的に変化時間は把握できていませんが、昼の実験(+20mV前後)と夜の実験(-2mV前後)では明らかに値が変わりました。






上記測定結果の場合、-1.9mVは個体や温度の違いによるずれ、±0.9mVは測定限界値を越えたぶれだと思うので、下記の方針で利用する測定値を定めます。

V: 利用する測定値
V_raw_average: 生の測定値3回分の平均値(平均することにより、測定毎のぶれを和らげます。)
V_diff_base: 個体で派生する電圧のずれ(上記文章の-1.9mV)
V = V_raw_average - V_diff_base

測定結果

R1: 1kΩで固定
R3: 10kで固定
Vplus: 5V
増幅幅: 1+R2/R1
Vinの理論値: Vplus*R4/(R3+R4) [V]
Voutの理論値: 増幅幅*Vinの理論値 [V]
差V: Voutの実測値-Voutの理論値
差%: (誤差/Voutの理論値)*100 [%]

R2 増幅幅 R4 Vinの理論値 Voutの理論値 Voutの測定値
(3回平均後測定機
ずれ修正値)
差V 差%
1M 1001 1 0.0005 0.5 0.508
0.008
1.6
1M 1001 0.1 0.00005 0.05 0.0557 0.0057
11.4
100k 101 1 0.0005 0.051 0.0513
0.0003
0.59
100k 101 0.1 0.00005 0.0051 0.00536 0.00026
5.1

考察

analog discovery2の測定差補正と組み合わせれば誤差10%以下で50uvを計測できそう

増幅幅101での50uvの測定は、OP70の場合では理論値との差が30%を上回っていましたが、AD4522なら5%の差で行なえました。
5%なら、それなりに使える値になりそうです。

OP70と同様にADA4522でも増幅率が増えると差が大きくなる

試したどちらのオペアンプでも1001倍は100倍の約2倍の誤差になるようです。

ADA4522はOP70の5倍以上精度が良い

OP70を使った時の測定結果の差の%と比較すると、ADA4522の方が高精度と分かります。

まとめ

今回試したゼロドリフトオペアンプADA4522は、前回試したOP70の5倍ほど精度がよく、増幅幅101倍なら50uvを誤差10%以下で測定できそうでした。

参考

アプリケーション・ エンジニアに尋ねる―39 ゼロドリフト・オペアンプ
OP70を使った時の記事へのコメント
データシート ADA4522

変更履歴

2021.07.31
SOP変換基盤と共に利用したピンヘッダL型のリンクを使ったものに追加しました。

4 件のコメント :

辻田 さんのコメント...

測定したいものに対して、十分に性能が出ているのなら、いいと思います。
もうちょっと性能を求めるのであれば、誤差の要因を調査して、気を使ってあげるとまだ行けるかなぁという気がします。

すぐに思い浮かぶのは2つで、負帰還をかけたアンプの増幅率が抵抗で決まるのは、OPアンプの裸のゲインが十分に大きい時なので、1001倍に対して、裸のゲインがどのくらい余裕があるのかは、気にした方がいいかもしれません。そこで誤差がある場合は、アンプを2段使って増幅してあげれば誤差は減ります。

1オームとか0.1オームの抵抗をブレッドボードで差し替えているようですが、ブレッドボードの接触抵抗は不安定で、かつ、今の接続だと2つの接触抵抗の影響が見えるので0.1オームぐらいに対しては無視できない影響があるかもしれません。(2つというのは、低い方の抵抗の両端の端子です。高い方の抵抗の接触抵抗の影響は見えないと思います。)

Asuki Kono さんのコメント...

コメントありがとうございます。
お名前はunknownですがプロフィールのIDが同じなのでOP70でコメントをして頂いた方と推測します。


> 1001倍に対して、裸のゲインがどのくらい余裕があるのかは、気にした方がいいかもしれません。

これはデータシートを元に計算するということでしょうか?


> アンプを2段使って増幅してあげれば誤差は減ります。

自分もこれができそうな気がしたので、数日前秋月電子に行く機会があった際にアンプを追加で1個購入しています。
今週の記事としてその実験結果を共有する予定でして、その結果を踏まえてOP70のコメントで試した内容をご報告しようと思っておりました。


> 0.1オームぐらいに対しては無視できない影響があるかもしれません。

OP70のときもそんな気がしていました。
ブレッドボードだと0.1Ωを利用した場合は誤差を5%以下にするのが難しいようなので、ブレッドボードでは1Ωで実験しようと思います。

辻田 さんのコメント...

辻田です。お世話になっています。
投稿時には、gmailのアドレスが表示されているのですが、unknownで投稿されているようです。全く気にしていませんでした。

Asuki Kono さんのコメント...

辻田さんでしたか、コメントありがとうございます(^-^)