背景
FusionPCBとはSeeedという電子部品を販売するwebショップの基板製造サービス部門です。プリント基板製造サービス——FusionPCB
自分は主にelecrow、時々PCBWayを利用していますが、製造の選択肢が増えても良いと思ったので、FusionPCBを試してみました。
注文方法と思ったことを、備忘録を兼ねて共有します。
使った感想としては、ステンシルマスクを合わせて注文する場合はelecrowより数$安くなるので、elecrowより到着が数日遅れても良いなら注文時の選択肢に入ると思いました。
使ったもの
KiCad
バージョン5.0.2を利用しました。Application: kicad Version: 5.0.2-bee76a0~70~ubuntu18.04.1, release build Libraries: wxWidgets 3.0.4 libcurl/7.58.0 OpenSSL/1.1.0g zlib/1.2.11 libidn2/2.0.4 libpsl/0.19.1 (+libidn2/2.0.4) nghttp2/1.30.0 librtmp/2.3 Platform: Linux 4.15.0-45-generic x86_64, 64 bit, Little endian, wxGTK Build Info: wxWidgets: 3.0.4 (wchar_t,wx containers,compatible with 2.8) GTK+ 2.24 Boost: 1.65.1 OpenCASCADE Community Edition: 6.9.1 Curl: 7.58.0 Compiler: GCC 7.3.0 with C++ ABI 1011
KiCadで作った基板データ
今回はArduino Leonardoの互換基板を注文しました。設計データはこちらです。
asukiaaa/LeonardoBB
PayPalアカウントかクレジットカード
支払いで利用します。PayPal とは、クレジットカードや銀行口座で決済が出来る、購入補償制度付きのシステムです。
PayPalを通さず、クレジットカードで直接支払うこともできます。
KiCadの基板データから注文に使うファイル(ガーバーデータ)を出力
seeedの説明ページを参考にしながら、ファイルを作成します。KiCADからガーバーファイルを出力する方法 – Feedback & Ideas for seeed
上記の記事と基本的に同じ内容ですが、複数の解説があってもよいと思うので、出力方法を説明します。(KiCadのバージョンが上がったりして記事の内容では出力なくなったときは、上記のページを参照してください。)
注文したいプロジェクトをKiCadで開き、PCB作成ボタンを押してPCB編集画面を表示します。
PCB編集画面のメニューから「ファイル」->「プロット」を選択して、製造ファイル出力画面を表示します。
製造ファイル出力をこのような設定にします。
- 出力ディレクトリー: gerbers
指定しておくと後でzipでまとめやすくて便利だと思います。 - 含まれるレイヤー: F.Cu, B.Cu, F.Paste, B.Paste, F.SilkS, B.Silks, F.Mask, B.Mask, Edge.Cuts
自分が操作したときは最初からこの設定になっていました。 - ガーバーオプション: Protelの拡張子を利用
seeedの解説ページに合わせて、Protel拡張子の設定を有効にします。
レイヤー情報の出力ができたら、製造ファイル出力画面の「ドリルファイルを生成」ボタンを押して、ドリルファイルの生成画面を開きます。
ドリルファイルの生成をこのような設定にします。
- 出力ディレクトリー: gerbers
製造ファイル出力と同じ設定になっていると思います。 - Excellonドリルファイルオプション: PTHとNPTHを一つのファイルにマージを有効
この設定が有効でないと、2種類のドリルファイルが出力されます。
FusionPCBはドリルファイルが1つであることを要求するようなので、1つのファイルにマージする機能を有効にします。
上記の操作を行うと、gerbersというディレクトリーの中に製造に必要なファイルが出力された状態になります、
FusionPCBは何も意識せず基板を発注すると、製造番号が印字されます。
大きな部品を使っていたら実装時に隠れる場所に印字されるため問題が無いことがあるものの、気にされる場合は「请不要加生产标识.txt」という名前の中身が空のテキストファイルをガーバーデータのディレクトリに含めると、製造番号を印字せずに基板を作ってくれるようです。
このgerbersの中のファイルを注文時に利用するので、gerbersディレクトリーをzipファイルとして圧縮しておきます。
ファイルエクスプローラーで右クリックすると圧縮メニューがあると思うので、それを利用するとzipに圧縮できます。
このgerbers.zipを注文に利用します。
注文
データをアップロード
FusionPCBの基板製造申し込み画面を開きます。ページ先頭にある「ガーバーファイルを追加」ボタンを押して、先ほど作成したgerbers.zipをアップロードします。
FusionPCBの求める形式のガーバーファイルをアップロードすると、基板の大きさが自動的に設定されます。
自分で大きさを測らなくて良いので便利です。
(他のPCB製造サービスであるelecrowやPCBWayは手動で大きさを入力する必要があります。)
板厚は8種類選べます。
今回の基板の大きさ(58x48mm)だと、このような料金になるようでした。
- 0.8-1.6mm: $4.9
- 2.0mm: 約$55
- 2.5mm: 約$160
- 3.0mm: 約$187
色は6種類から選べます。
どの色も価格は変わらないようです。
今回は青にしてみました。
基板だけの注文で良い場合は、この状態で「カートに追加」ボタンを押して発注に進めます。
今回は表面実装部品をはんだ付けするために、はんだ用のステンシルマスクも一緒に注文します。
これを使うとフットプリントの形に合わせてクリームはんだを基板に塗れるので、リフリー用のオーブンやホットプレートを利用すれば、表面実装部品を自分で実装できます。
以前はレーザーカッターで紙に穴を開けてマスクを作ったりしていましたが、紙だと精度が高くないことと、穴あけに利用していたレーザーカッターが使えなくなったため、1年前くらいからマスクを注文しています。
(関係する過去の記事: ホットプレートを改造してリフローマシンを作る方法、ホットプレートと紙のステンシルでリフロー → 手はんだ → 組み立て)
ということで、ステンシルを注文するために注文ページの下の方にある「メタルマスクサービス」を押してメニューを開きます。
基板のガーバーデータとgerber.zipをメタルマスクの用にアップロードします。
マスクの大きさはいくつか選べます。
自分が確認したときの小さめのマスク価格はこのようになっていました。
- 10x15cm フレーム無し: $8.9
- 28x38cm フレーム無し: $9.9
- 30x40cm フレームあり: $14.5
基板とマスクを合わせて、今回の送料を含まない商品代金は$13.8になりました。
「カートに追加」を押して商品を登録します。
支払い
ページ右上にあるカートのマークを押して、ショッピングカートの中身を確認します。「安全に支払い」か「Log in with PayPal」を押して、支払いに進みます。
安全に支払いだとSeeedアカウントでの、Login with PayPalだと、PayPalでのログインをそれぞれ要求されます。
ログインした後に遷移する画面はどちらも同じ送り先・配送方法・支払い方法確認画面です。
注文履歴などを確認しやすくなるので、Seeedのアカウントを作成して注文することを個人的にお勧めします。
登録している住所がない場合は「新しい住所を追加」から住所を追加して、送りたい住所の「この住所に配送」を押します。
住所の次は配送業者を選びます。
elecrowのOCS($13.24で2-3日)ほど安くて早くないですが、$17.45で3-5日のOCSを選びました。
業者を選んだら「続く」を押します。
配送業者の次は支払い方法と請求先を選びます。
今回はPayPalを選びました。
配送先住所、配送業者、支払い方法を入力したら、画面右側の「お支払手続きに進む」を押します。
今回は基板$4.9、ステンシルマスク$8.9、送料$17.45で合計$31.25になりました。
elecrowで同様の注文を行うと$34.13(基板$4.9、マスク$16、送料$13.23)なので、約$3安いです。
なお、基板だけを注文するなら送料の低いelecrowの方が約安$4くなります。
支払いが済んだら注文完了です。
待つ
製造と配送を待ちます。注文履歴にアクセスして「詳細を表示」を押すと、現在の状況を確認できます。
到着
待つこと8日、OSCに配送を委託された佐川急便から、elecrowの注文と同じOCSの袋を受け取りました。中にはSeeedと書かれた箱が入っていました。
箱の中には梱包材に巻かれて基板とステンシルマスクが入っていました。
下記の写真は梱包材を取った後の様子です。
基板の仕上がりはこちらです。
PCBWayと同様、基板に製造番号が印字される形式です。
ガーバーデータ作成時にも説明しましたが、ガーバーデータをまとめるディレクトリに「请不要加生产标识.txt」というテキストファイルを追加しておくと、部品番号を印刷せずに製造してくれるようです。
ステンシルマスクには基板のフットプリントに対応する穴が期待通りに開いていました。
ステンシルマスクを利用してはんだを塗り、別途購入しておいた部品を載せ、ホットプレートでリフローすることで実装できます。
(関係する過去の記事: ホットプレートを改造してリフローマシンを作る方法、ホットプレートと紙のステンシルでリフロー → 手はんだ → 組み立て)
今回は8日かかりましたが、これはPCBの完成が金曜夕方になりOCSの発送が週明けになったかららしいので、発注する曜日によっては数日速くなる可能性があるようです。
余談: Seeedの部品を一緒に頼んでも、送料を減らせない
SeeedとFusionPCBのショッピングカートは同じなので、Seeedで売られている商品も同時に発注処理を進められます。しかし、Seeedの商品とFusionPCBの基板は拠点が別らしく、それぞれ送料を請求されてしまいます。
Seeedには個人的に気になる部品があるので、基板と一緒に買って送料を減らせたら嬉しかったのですが、一緒に注文したところでその利点は無いようでした。
まとめ
FusionPCBで基板を作成できました。Elecrowと比較すると、何もしないと基板に部品番号が印刷されてしまうのが厄介ですが、ステンシルマスクと基板と送料を合わせた価格が安くなりました。
マスク付きで基板を作りたい場合は、FusionPCBが製造先の選択肢の一つになると思いました。
この情報が何かの役に立てば嬉しいです。
変更履歴
2019/05/01 fusionをfsuionとタイプミスしている箇所があったので、修正しました。2019/10/31 製造番号を記入してもらわないためのファイル名(请不要加生产标识.txt)を表示していなかったので、明記しました。
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